2025/05/04

Taiwan Today

政治

蔡総統、権威主義時代の国の不法行為を謝罪して白色テロ被害者に「名誉回復証書」授与

2023/09/11
権威主義時代の国家による不法行為を認め、白色テロ被害者の名誉を回復する式典が9日、初めて行われた。蔡総統は冒頭で、権威主義時代の国家の不法行為によって権利侵害を受けた人々やその遺族に対して政府を代表して謝罪した。写真右は今月3日に亡くなった白色テロ被害者の一人、蔡焜霖さんの長男の蔡炎龍さん。(総統府)
権威主義時代の国家による不法行為を認め、権威主義時代に行われた政治的迫害(白色テロ)などで被害を受けたいわゆる「政治受難者」の名誉を回復する式典「『誌過去、致未来』-平復国家不法及名誉回復証書頒発聯合典礼」が9日、初めて行われた。式典に出席した蔡総統は冒頭で、権威主義時代の国家の不法行為によって権利侵害を受けた人々やその遺族に対して、政府を代表して謝罪した。
 
蔡総統はあいさつで、「台湾はすでに自由で民主的な国家だ。移行期正義の取り組みを通して、かつての権威統治を見直し、国家が行った不法行為について責任の所在を明らかにし、歴史の真相をつまびらかにする必要がある」と指摘。このため、2017年に「促進転型正義条例」を制定して促進転型正義委員会(=移行期正義促進委員会)を立ち上げ、移行期正義の実現に取り組んできたこと、昨年、促進転型正義委員会が段階的な任務を終えて解散したことを受け、行政院(=内閣)に指示してこれらの業務を6つの省庁(内政部、法務部、文化部、衛生福利部、教育部、国家発展委員会)に引き継がせたことなど、政府の取り組みの経過を説明した。
 
蔡英文総統によると、そのうち法務部がまとめた「司法の不法行為」と「行政の不法行為」は合計1,439件に達し、内政部が権利回復業務を担っている。具体的には今年1月に「権利回復基金会」を設置し、関連の作業に取り組んでいる。同基金会は現在までに1,594件の賠償請求を受理し、支払った賠償金は22億台湾元(約100億日本円)を超える。名誉回復証書の申請については、すでに1,439件が審査を通っており、この日の式典で初めて白色テロ被害者または遺族らに手渡された。
 
蔡総統は式典で、今月3日に亡くなった白色テロ被害者の一人である蔡焜霖さん(1930-2023年)に言及。蔡焜霖さんは白色テロの初期の段階に政治犯として緑島へ送られ、10年間の獄中生活を送ることになったが、それによって打ちのめされることなく雑誌を創刊し、紅葉小学校の少年野球チームを援助し、人権教育の普及に尽力してきたと説明。「きょう、この場に来ることはできなかったものの、彼の精神と遺志は台湾の民主主義の道のりにおいて、これからも我々を前へと導いてくれるだろう」と述べた。
 
蔡総統はまた、遺族として出席した王文宏さんと、白色テロ被害者の呂昱(呂建興)さんから「生存する被害者が少なくなってきた。加害者責任の追及をできるだけ急いで欲しい」と求められたとした上で、自身の任期内(2024年5月)に作業をできる限り進めていくことを約束した。
 
蔡総統は最後に、「権威主義時代の被害者一人一人が遭遇した出来事は、決して被害者1人だけの出来事ではなく、我々が共通して向き合わなければならない一つの時代の歴史だ。こうした歴史の真相を明らかにし、傷を癒し、理解を得ることが移行期正義の目的であり、台湾の民主主義と自由を後退させないようにするものだ」と締めくくった。
 
 

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